かぎゅー庵
日々思うことを徒然に。百合(少女同士の恋)小説・イラストなども置いています。この手のジャンルに興味のない方、嫌悪を感じる方はご注意ください。また、ジャンルがアダルトですので、18歳未満の方はご遠慮下さい。
かげふみ  あとがき



このお話は「告白〜男の子になった日」のエピローグに出てくる、「恋人とはぐれて
しまった鬼の話」はどうだろう?ということから始まりました。
二年ぐらい前のことですね。

しばらくはああでもない、こうでもない…と首をひねっていたのですが、ある時ふと
『かげふみ』というタイトルが浮かんで、なんで影踏みなのかな?と思いつつ、
タイトルだけが決まっている…という月日を送りました。
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かげふみ  0’
 

 



 

 

 

 

午後六時の鐘が鳴る。

 

わたしはいつものファーストフード店で連絡を待っていた。
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かげふみ  12



【永遠】

 

 

 

…さく、さく、さく、

散り敷かれた落ち葉の道を、琴子とさよりが歩いている。

日曜の公園。

町から少し離れたそこは、交通の便が悪いこともあり、広さの割にはあまり人の訪
れない場所だった。ふたりっきりの散策にはもってこいだ。

手をつなぐ彼女らは、まるで何事もなかったように、仲睦まじく歩を進める。時折肩
へ気の早い落ち葉が触れ、秋の匂いを運んでいた。

けれども、琴子にはわかっていた。
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かげふみ  11



【終了】

 

 

 

午後六時の鐘が鳴る。

 

琴子は緑ヶ丘公園のフェンスにもたれ、崖下の町を眺めた。

どの家もどの車もどの人々も長い影を引きずり、それぞれの道を辿っていく。

夕陽が真っ赤に焼けながら地平線の薄雲の中へ隠れてゆく。そうすると、太陽の
赤がいっそう引き立った。

公園には誰もいなかった。

元々、人が寄りつくような公園ではない。

真昼間はホームレスや老人が暇を持て余して寝転んでいるし、最近は夜間パトロ
ールがうるさくて誰も近寄らない。

坂道の一角を切り取ったようなここは、申し訳程度の砂場とベンチとほったらかし
の木々に囲まれた無人の空間だった。

コンビニの袋やペットボトルが無残に散らかっている不快な場所で、琴子はただ眼
下の風景を眺めていた。

彼女の後ろにも、長い長い影が伸びている。

 

「―――踏んだ」

 

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かげふみ  10



7日目】

 

 

 

教えられたのは武蔵境の近くにある手狭なバーだった。

琴子は指定されたとおり、午後の4時ごろ訪れた。まだ開店するには早い時刻だ。

陽の傾きはだいぶ早くなってきたけれど、暑さはまだ地面にしがみついている。当
分、苦しめられることになりそうだ。

バーはアパートの一階を改造したもので、いくつかの飲み屋が軒を並べている。湯
沢桜子の店もそのうちのひとつだ。

外では『雪牡丹』の文字の入った看板が、電源を抜かれ暑そうに放置されている。

ドアはアパートに使われているもので、看板がなければ水商売の店だとは誰も気
づかないだろう。それが今は開け放してある。

桜子はカウンターの中でグラスを磨いていた。

カウンターの他には小さなテーブルが2つと、カラオケの設備。客が十人入るかどう
かも怪しいくらい狭い。

琴子がドアの前に立つと、

「おや」

と制服姿を見咎める。

「いいのかい、そんな格好で」

「信用されないかと思いまして」

桜子はじろりとこちらを見ると、

「ふうん…」

グラスを棚に戻してゆく。

「いらない苦労をしてるみたいだねえ」
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かげふみ  9



6日目】

 

 

 

<湯沢さんのお宅ですか>

<…あんた誰?>

<十条寺といいます。笹岡雪恵の後輩の>

<…ああ、あの娘のね。ふうん…後輩なの>

<死んだ先輩の事について2,3お伺いしたいのですが。それと…『かげふみ』のこ
とについて>

<…この電話はどうやって番号を知ったの>

<教えてもらったんです>

<誰に>

<笹岡先輩に>

<あの娘から? どうして?>

<わかりません>

<どういう話…?>

<先輩が死んだ後、メールが来たんです。『かげふみ』の。それと同時にもう一通>

<参加者の住所がわかったのね>

<はい>

<何のために>

<それが知りたいんです>

<………………>

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かげふみ  8



5日目】

 

 

 

多田織南の家はS区の界隈にあった。

この辺の住宅はわりと収入の良い家が多いが、御多分に漏れず多田織家もそれ
相応の佇まいをしている。

連絡を入れた琴子は南から「家に来るならいいよ」との返事を貰っていた。

<もしかして、ずうっと家にいるつもり? この一週間>

<そうだよ>

素っ気ない返事が返る。

<参加資格がなくなるけど?>の問いに、南は電話の向こうからただ笑っていた。
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かげふみ  7



4日目】

 




デパートの屋上は閑散としていた。

午後。

昼食の時間帯も過ぎて――というより元々客が来ない場所なのだろう、子供向け
に設置された玩具たちがわびしげに立っている。今時にしては安い、50円を入れ
たら動くゾウや飛行機の乗り物だとか、人が歩く方が早いゴーカートとか。どれも
塗装が剥げかかり、使われていないのがわかる。買い物客の主婦が子供を遊ば
せるためのコーナーなのだろうけれど、そもそも主婦よりも学生や若いOLをター
ゲットにしている店が、こんな場所を作ること自体間違っているのだ。

そんなちぐはぐな雰囲気の空間だけれど、この場合はよく似合っている気がする。

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かげふみ  6



3日目】

 

 



カラン、とドアベルが鳴る。

強い風と雨に背中を押されながら、琴子はドアをくぐった。 

藤崎さんが指定した場所は、やはり喫茶店だった。

とはいっても、こちらはパステルカラーを基調とした全体的に明るい雰囲気のお店。
それこそ年頃のお嬢さま方が好みそうな、コーヒーや紅茶より甘い菓子を売り物に
したお店。

午後六時。

外の荒れ模様も知らぬげに、ここには人工の光があふれている。人類が自然に勝
ったと錯覚する、まやかしの空間。

琴子は傘を畳んで傘立てに挿し込み、レインコートを脱いで、店内をゆっくりと見渡
した。空調が良く効いているので、空気は乾いている。琴子はホッとした。

「一名様ですか」

店員の応対に首を振る。

「待ち合わせなんですけど」

「こっちよ、こっち」

弾んだ声がするので振り向くと、ガラスの仕切りの向こうで手を振る少女。もちろん
藤崎久美さんだった。

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かげふみ  5



【2日目】

 

 

教室に入ると、小鳥遊さんと目が合った。

琴子は無視して自分の席につく。

彼女の探るような瞳を見ていると、きのうの怒りが鈍く胃袋でくすぶり返すのがわか
った。

小鳥遊さんはさりげなく立ち上がり、他に用があるように琴子の近くを二、三度通り
過ぎる。けれど琴子が相手にしないでいると、あきらめてまた席についた。

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