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【赤いハンカチ】
「もう一人の自分ってさ、やっぱり居るんだと思う?」
「いるんじゃない?」
話しかけられた綾瀬は、小泉八雲の『怪談』から目を上げた。
ときわ学園の図書館は、高校にしてはなかなかの蔵書を誇っている。
閲覧スペースもそこそこ広いし、昼休みの雑談にはもってこいだ。
とはいえ、読書が三度の飯より好きな綾瀬にしてみれば、世間話に図書館を使うな どもっての他。マナー違反なのである。
鈴川亜古〔すずがわ・あこ〕のように、ふだんは足も向けない輩がいきなり向かいの 席に座って、突拍子もない話を始められるのは迷惑以外の何物でもない。
「見たって人がいるんだけど」
声をひそめて亜古が言う。もっとも、周りに気を使ってのことではなく、秘密の話をす るのにふさわしいから。
「鈴川さん」
綾瀬は元クラスメートの名を呼んだ。
「ここ、図書館。本を読むところ。で、あたしは読書中…わかるでしょ?」
「ああ、わかるわよそれは…どうしようかな」
亜古は指でトトンとテーブルを叩きながら思案した。
「けっこう深刻〔マジ〕な話なんだけど。別のところで話さない?」
「放課後になったらね。今はキャンセル。それとも、他の人に相談して」
とりつく島もない綾瀬に、亜古はしばらく睨んでいたけれど、あきらめて図書館を出 て行った。
綾瀬は気にしない。
たちまち本の世界へ埋没してゆく。 (あー、『おしどり』って怖い話よねー、やっぱり) [READ MORE...]
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